数学論文野川グループ事件控訴審:アイデア・表現二分論(数学命題の解明過程及びこれに使用した方程式)

平成6年2月25日判決 平成2年(ネ)第2615号 損害賠償等請求控訴事件
阪高裁(潮久郎裁判長)
知的裁集26巻1号179頁,判時1500号180頁,判タ846号244頁,百選[4版]1事件,中山37頁,高林30頁
判決全文

  • 数学に関する著作物の著作権者は,そこで提示した命題の解明過程及びこれを説明するために使用した方程式については,著作権法上の保護を受けることができない(イデア・表現二分論

一般に、科学についての出版の目的は,それに含まれる実用的知見を一般に伝達し,他の学者等をして,これを更に展開する機会を与えるところにあるが,この展開が著作権侵害となるとすれば,右の目的は達せられないことになり,科学に属する学問分野である数学に関しても,その著作物に表現された、方程式の展開を含む命題の解明過程などを前提にして,更にそれを発展させることができないことになる。このような解明過程は,その著作物の思想(アイデア)そのものであると考えられ,命題の解明過程の表現形式に創作性が認められる場合に,そこに著作権法上の権利を主張することは別としても,解明過程そのものは著作権法上の著作物に該当しないものと解される。