へんしんふきごま事件控訴審判決:「折り図」の著作物該当性等

平成23年12月26日判決 平成23年(ネ)第10038号 損害賠償請求控訴事件
知財高裁第3部(飯村敏明裁判長,池下朗裁判官,武宮英子裁判官)
判決全文

  • 事案の概要
    • 折り紙作家であるXが,Yに対し,Y制作に係るテレビドラマの番組ホームページにY折り図(説明文を含む。)を掲載したYの行為について,Y折り図は,X書籍に掲載された本件折り図(説明文を含む。)を複製又は翻案したものであり,YによるY折り図の作成及び本件ホームページへの掲載行為は,Xの著作物である本件折り図についてXの有する著作権(複製権ないし翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)の侵害に当たる旨主張し,損害賠償及び謝罪文の掲載を求めた(予備的に,不法行為の主張)。
  • 原判決
    • 原判決は,本件折り図の著作物性を認めたが,Y折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴部分を直接感得することができないとして,YによるY折り図の作成及び本件ホームページへの掲載行為は,Xの複製権ないし翻案権及び公衆送信権のいずれの侵害にも当たらない,同一性保持権及び氏名表示権のいずれの侵害にも当たらないと判断し,Xの主位的請求は理由がないとした(不法行為の主張も排斥)。
  • 控訴審の判断
    • [原判決の理由を引用。]
    • Y折り図と本件折り図とは,上記のとおりの相違点(説明文の位置づけ,説明の表現方法,写真使用の有無,色分けの有無など)が存在し,折り図としての見やすさの印象が大きく異なり,分かりやすさの程度においても差異があることから,Y折り図は本件折り図の有形的な再製には当たらず,また,Y折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴が直接感得できるともいえない[から],Yが被告折り図を作成する行為は,本件折り図について有するXの複製権ないし翻案権を侵害しない。
    • 著作権法により,保護の対象とされるのは,「思想又は感情」を創作的に表現したものであって,思想や感情そのものではない(著作権法2条1項1号参照)。Xの主張に係る「32の折り工程のうち,10個の図面によって行うとの説明の手法」それ自体は,著作権法による保護の対象とされるものではない。 /これら[両折り図の共通点]は,読者に対し,わかりやすく説明するための手法上の共通点であって,具体的表現における共通点ではない。そして,具体的表現態様について対比すると,本件折り図とY折り図とは,…数多くの相違点が存在する。Y折り図は本件折り図の有形的な再製には当たらず,また,Y折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴が直接感得できるともいえない。