まねきTV事件上告審:自動公衆送信装置

平成23年1月18日判決 平成21年(受)653号 著作権侵害差止等請求事件
最高裁第三小法廷(田原睦夫裁判長,那須弘平裁判官,岡部喜代子裁判官,大谷剛彦裁判官)
判決全文
原審判決全文
(原審)知財高裁平成20年12月15日判決
判時2038号110頁,中山479頁,高林267頁

  • 事案の概要
    • 本件は,放送事業者である上告人らが,「まねきTV」という名称で,放送番組を利用者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する機器を用いたサービス(以下「本件サービス」という。)を提供する被上告人に対し,本件サービスは,各上告人が行う放送についての送信可能化権著作権法99条の2)及び各上告人が制作した放送番組についての公衆送信権(同法23条1項)を侵害するなどと主張して,放送の送信可能化及び放送番組の公衆送信の差止め並びに損害賠償の支払を求める事案である。
  • 原審の認定した事実関係の概要
    1. 「上告人ら(上告人X4を除く。)は,放送事業者であり,それぞれ,原判決別紙放送目録記載のとおり,同目録記載の各放送(以下,同目録記載の各放送を「本件放送」と総称する。)について送信可能化権を有する。Aは,放送事業者であった者であり,同目録記載のとおり,同目録記載の放送について送信可能化権を有していた。/上告人ら(上告人X4を除く。)及びAは,それぞれ,別紙放送番組目録記載のとおり,同目録記載の各放送番組(以下「本件番組」と総称する。)を制作した。/上告人X4は,放送事業者であり,平成20年10月1日,会社分割により,Aのグループ経営管理事業を除く一切の事業に関する権利義務を承継した。」
    2. 「本件サービスにおいては,Bが販売するロケーションフリーという名称の商品(以下「ロケーションフリー」という。)が用いられるが,ロケーションフリーは,地上波アナログ放送のテレビチューナーを内蔵し,受信する放送を利用者からの求めに応じデジタルデータ化し,このデータを自動的に送信する機能を有する機器(以下「ベースステーション」という。)を中核とする。/ロケーションフリーの利用者は,ベースステーションと手元の専用モニター等の端末機器をインターネットを介して1対1で対応させることにより,ベースステーションにおいてデジタルデータ化されて手元の端末機器に送信される放送を,当該端末機器により視聴することができる。その具体的な手順は,(1) 利用者が,手元の端末機器を操作して特定の放送の送信の指示をする,(2) その指示がインターネットを介して対応関係を有するベースステーションに伝えられる,(3) ベースステーションには,テレビアンテナで受信された地上波アナログ放送が継続的に入力されており,上記送信の指示がされると,これが当該ベースステーションにより自動的にデジタルデータ化される,(4) 次いで,このデータがインターネットを介して利用者の手元の端末機器に自動的に送信される,(5) 利用者が,手元の端末機器を操作して,受信した放送を視聴するというものである。」
    3. 「被上告人は,本件サービスを行うに当たり,利用者から入会金3万1500円,月額使用料5040円の支払を受けて,利用者が被上告人から本件サービスを受けるために送付した利用者の所有するベースステーションを,被上告人事業所内に設置し,分配機等を介してテレビアンテナに接続するとともに,ベースステーションのインターネットへの接続を行っている。/本件サービスの利用者(以下,単に「利用者」という。)は,ベースステーションと対応関係を有する手元の端末機器を操作することにより,ベースステーションの設置された地域の放送を視聴することができる。
  • 上告理由
    • 上告人らは,被上告人が,ベースステーションに本件放送を入力することにより,又は本件放送が入力されるベースステーションのインターネットへの接続を行うことにより,利用者が本件放送を視聴し得る状態に置くことは,本件放送の送信可能化に当たるとして,上告人らの送信可能化権の侵害を主張する。
    • また,上告人らは,被上告人が,本件番組を公衆である利用者の端末機器に送信することは本件番組の公衆送信に当たるとして,上告人らの公衆送信権の侵害を主張する。
  • 原審の判断(請求棄却)
    1. 送信可能化は,自動公衆送信装置の使用を前提とするところ(著作権法2条1項9号の5),ここにいう自動公衆送信装置とは,公衆(不特定又は多数の者)によって直接受信され得る無線通信又は有線電気通信の送信を行う機能を有する装置でなければならないベースステーションは,あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信するという1対1の送信を行う機能を有するにすぎず,自動公衆送信装置とはいえないのであるから,ベースステーションに本件放送を入力するなどして利用者が本件放送を視聴し得る状態に置くことは,本件放送の送信可能化には当たらず,送信可能化権の侵害は成立しない。
    2. ベースステーションは,上記のとおり,自動公衆送信装置ではないから,本件番組を利用者の端末機器に送信することは,自動公衆送信には当たらず,公衆送信権の侵害は成立しない。
  • 上告審の判断(原判決破棄,差戻し)
    1. 送信可能化権侵害について
      • 「送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする行為をいい,自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)。/自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。
      • 「そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。
      • 「これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。」
    2. 公衆送信権侵害について
      • 「本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。」
  • 結論
    • 「以上によれば,ベースステーションがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しないことのみをもって自動公衆送信装置の該当性を否定し,被上告人による送信可能化権の侵害又は公衆送信権の侵害を認めなかった原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,論旨は理由がある。原判決は破棄を免れず,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。」